陰部(性器)のかゆみ

性器(陰部)は男性の陰茎や陰嚢、女性の外性器や腟などを意味し、デリケートゾーンと呼ばれています。温度や湿度が高く、蒸れやすいことからかゆみを起こしやすい部位です。風呂上がりなどで体温が高い場合や、または乾燥することでかゆみが生じやすくなります。日常的な原因によるかゆみのほとんどは一時的なものですが、場合によっては長時間続く場合もあります。
ただし、性器のかゆみは疾患が原因になって生じている可能性もあります。かゆみが続く、違和感など他の症状も伴う場合には、受診して原因疾患がないかを調べましょう。

性器のかゆみを
引き起こす疾患

性感染症はかゆみや違和感程度の自覚症状しか起こさないことも多く、自然治癒することはありません。悪化や深刻な状態まで進行させないために、そして感染を広げないために、できるだけ早く適切な治療を受ける必要があります。
性感染症は、性的な接触で感染する病気であり、原因となる病原体は細菌・ウイルス・真菌・原虫と様々です。それぞれ適した治療法が異なり、細菌の場合でも病気に合わせて異なった抗生物質を使わないと改善が見込めない場合もあります。医療機関を受診して検査を受け、原因疾患や状態に合わせた治療を行い、完全に治ったことを確認することが重要です。

  男性 女性
性器ヘルペス ・痛痒さを伴う水泡・潰瘍ができる
・発熱やリンパ節腫脹などを伴うことがある
クラミジア ・尿道のかゆみ・痛み・違和感
・尿道からの膿
※無症状のこともある
・おりものの量が増える
・おりものから悪臭がする
・排尿痛(膀胱炎に似た症状)
※無症状のこともある
淋病 ・尿道のかゆみ・痛み・違和感
・尿道からの膿
症状はクラミジアより強く出る傾向があります。
・おりものの量が増える
・おりものから悪臭がする
・排尿痛(膀胱炎に似た症状)
※無症状のこともある
症状はクラミジアより強く出る傾向があります。
カンジダ ・陰部の赤み・かゆみ・白いカス
(亀頭包皮炎)
※無症状のこともある
・ヨーグルトのようなおりもの
・陰部の強いかゆみ
・抗生剤を内服後に症状が出る
トリコモナス ※無症状のことが多い ・おりものから悪臭がする
・陰部の赤み・違和感
細菌感染 ・陰部のかゆみ・痛み・違和感
・できもの
・膿
・おりものの量が増える
・おりものから悪臭がする
・排尿痛(膀胱炎に似た症状)

性器のかゆみ・違和感は、原因疾患や状態によって内容が変わってきます。また感じ方にも個人差が大きく、肌や粘膜などの状態によって同じ疾患でもかゆみの強さは変わってきます。日常的な原因でかゆみを起こすこともありますが、性感染症をはじめとした多くの疾患に共通した症状ですので、性器のかゆみが続く場合には早めに医療機関を受診しましょう。

クラミジア

日本では最も発症者数の多い性感染症であり、特に若い世代の感染が増加傾向にあります。
女性は自覚症状を起こさないことも多く、男性にも軽い症状しか現れないケースが多くなっています。男性に現れる主な症状は、性器や周辺のかゆみや違和感で、排尿時に軽い痛みを起こすこともあります。また、尿道口から膿や半透明または乳白色の分泌物が出る症状を起こすこともあります。軽い違和感程度のこともありますので、気になる症状がありましたら気軽に受診してください。

クラミジアはこちら

淋病

淋菌による性感染症であり、男性には尿道のかゆみや違和感、激しい排尿痛、尿道口から白く粘度の高い膿や分泌物が大量に出るなどの症状を起こします。
女性は無症状のことが多いため、パートナーが感染している場合には症状がなくても検査を受ける必要があります。

淋病はこちら

性器ヘルペス

男女ともに、性器のかゆみや違和感、水疱、ただれなどの症状を起こします。太腿や肛門などに症状を起こすこともあり、感染後初めて症状を起こす初発では強い症状を起こしやすいのですが、再発では初発のような強い症状が現れることはほとんどありません。ヘルペスは症状が解消してもウイルスが神経に潜伏し、免疫力が落ちると活動を再開して病変を生じます。再発を繰り返している場合、ピリピリする違和感などの予兆があった時点で受診し、治療を受けることで重い症状を起こさずに済む可能性が高くなります。

性器ヘルペスはこちら

亀頭包皮炎

男性の亀頭やそれを包む包皮が細菌や真菌であるカンジダなどに感染して発症します。性器のかゆみや違和感、痛みや腫れ、赤み、皮むけなどの症状を起こします。カンジダの場合は白いカスのようなものがたまり、悪臭を生じます。
細菌性包皮炎は、過度の洗浄による強い刺激、免疫力低下によって常在菌が異常に増殖して炎症を起こします。
なお、カンジダ性の亀頭包皮炎は性的な接触によって発症することがあり、性感染症に含まれます。

亀頭包皮炎はこちら

陰嚢湿疹

睾丸を包む袋状の皮膚に湿疹を起こしている状態です。汗や蒸れによって生じることもありますが、乾燥して皮膚のバリア機能が低下して湿疹を生じることもあります。かゆみが強いからと掻いてしまうと悪化して皮膚が分厚くなってしまいますので注意が必要です。

腟炎

女性の腟が炎症を起こしている状態の総称であり、様々な疾患によって生じます。性器のかゆみや違和感が主な症状ですが、原因疾患によってはおりものの量や性状、匂いに変化を生じる場合もあります。
腟炎の原因疾患には、カンジダやトリコモナスなどの性感染症が多いのですが、常在菌である一般細菌によって生じることもあります。常在菌による腟炎は、陰部の不衛生、免疫力低下が原因となって生じることが多いのですが、洗浄のし過ぎで皮膚のバリア機能が低下することで感染するケースも少なくありません。
これらの症状を自覚された場合は、泌尿器科ではなく産婦人科へご相談ください。

性器のかゆみや
違和感の検査・治療

受付性器のかゆみや違和感は幅広い原因によって生じ、日常的な原因で生じることもありますが、様々な疾患の症状として起こることもあります。かゆみや違和感は軽い病気の症状と誤解されやすいですが、実際には早急な治療が必要な病気によって生じている場合もあり、注意が必要です。
また、原因疾患や状態によって治療も異なり、内服薬、点滴、軟膏、クリーム、腟錠など使われる薬も変わります。抗生物質も病気によって使い分ける必要があり、さらに真菌には抗真菌薬、原虫には抗原虫薬など、病原体に合わせた処方を行わないと治療効果を得られません。
性感染症は症状が消えてからも体内に病原体が残っている間は治療が必要です。治療後に再検査を受け、病原体が完全に消えたことを確認できたら治療が終了となります。治療を途中で中断してしまうと再発し、悪化や感染を広げてしまう可能性がありますので、しっかり最後まで治療を受けましょう。また、感染が分かった時点で無症状の場合でもパートナーにも必ず検査を受けてもらうようにしてください。

知らない間に深刻な状態に
なる可能性があります

性感染症は強い症状を起こさないまま身体の中で感染範囲を広げてしまうことがあります。男性の場合は前立腺や精巣に広がって精巣上体炎や前立腺炎を起こす原因になり、女性の場合は卵巣まで広がって卵管炎などを起こします。また、進行すると男女ともに不妊につながってしまう可能性もあります。また、女性の場合、出産時に感染していると母子感染を起こす危険性があります。
性器のかゆみや違和感は日常的な症状ですが、改善しない場合やいつもと違う感触がある場合はすぐに受診して検査を受けるようにしてください。

その他のページはこちらから

症状の解説ページ

疾患の解説ページ